本当のミュシャに出会えた日 (アルフォンス・ミュシャ)

アール・ヌーヴォーを代表する芸術家の一人、アルフォンス・ミュシャ。

(チェコ語発音ではムハ)と言います。

アール・ヌーヴォーの華やかなアーチの中に描かれた女性は、

美しさをよりいっそう輝かせてくれます。

ミュシャのファンになってから、いつか彼の作品に触れたいと思っていました。

 

彼の集大成は余りの作品の大きさから、ほとんどの人の目に触れることのなかった

幻の傑作と言われる「スラブ叙事詩」

この度国立新美術館で開催されることを知り、何をおいてでも見に行こう!

と楽しみにしていました。

 

私がミュシャが好きになったのは、このお話を知ってから。

今思えばこの絵のストーリーが好きだったのかもしれません。

 

本当のミュシャに出会えた日 (アルフォンス・ミュシャ)

 

 

クリスマスの翌日、ミュシャは、友人の休暇の代わりに印刷所で働いていました。

すると印刷所の支配人が現れ、思いがけず『ジスモンダ』のポスターを年内に作ることを依頼されます。

ポスター製作の経験がないミュシャでしたが、彼は納期も全くないその依頼に挑戦するのです

そして31日、ポスターが刷り上がったのです。

 

「ジスモンダ」を主演したのは、大女優のサラ・ベルナール。

彼女はこのポスターを一目見て気に入り、ミュシャと専属契約を結びました。

年が明けた時、ミュシャのポスターは一斉にパリの広告塔を飾り、

ジスモンダのポスターで、彼は一夜にして成功をおさたのです

そしてミュシャは、アール・ヌーヴォーを代表する、人気ポスター画家として躍進していくのです。

 

本当のミュシャに出会えた日 (アルフォンス・ミュシャ)

 

当時映画の宣伝はポスター。

『ジスモンダ』は、古代アテネを舞台にした恋愛劇のタイトルです。

ポスターに描かれているヒロインは、誇り高き王妃のジスモンダ。

彼女が手にしているのは、芝居のクライマックスシーンを象徴するシュロの葉です。

背景にはタイトルのほかに、劇場のルネサンス座と、主演女優のサラ・ベルナールの名前が描かれています。

 

彼の描いたポスターは、ストーリーの想像を膨らませる絵が入っていて、

思わず”観に行きたい”と駆り立ててしまうそう。

彼が描くと舞台が大ヒットすると噂が立つほど。

 

優美で装飾的な作風は多くの人を魅了し「私も書いて欲しい」という多くの女優さんからの

声がかかったそう。

 

本当のミュシャに出会えた日 (アルフォンス・ミュシャ)

 

彼のデザインはビジネス界まで広がり、ポスターだけでなく、パッケージや切手の依頼、etc・・・

画家で食べていくのはとても厳しい世界ですが、ミュシャのところには様々な依頼がきて

収入に困ることはなかったそう。

 

本当のミュシャに出会えた日 (アルフォンス・ミュシャ) (素敵なビスケットの缶)

 

でもミュシャの心の中には、本当に描きたいものがあったのです。

しかし、サラベルナールのポスターがヒットし、

そのニーズにこたえるため、そしてやはり食べていくために、

ビジネスとして、あの一連のポスター作品を制作していました。

それは避けられない芸術家の悲しい性。

 

華やかで洗練されたポスターや装飾パネルを手がけていた一方で、

ミュシャは故郷チェコや自身のルーツである、スラヴ民族の主体性を

テーマにした作品を数多く描きました。

 

そして「残りの人生をひたすら我が民族に捧げる」という誓いを立てたそう。

その集大成が、50歳で故郷に戻り、晩年の約16年間を捧げた画家渾身の作品が

《スラヴ叙事詩》です。

 

本当のミュシャに出会えた日 (アルフォンス・ミュシャ)

 

およそ縦6メートル、横8メートルに及ぶ巨大なカンヴァスに描かれた20点の油彩画は、

スラヴ民族の苦難と栄光の歴史を映し出す壮大な絵でしたが、

私はそれ以上に、ミュシャに対しての衝撃と感動した方が大きかったのです。

 

本当のミュシャは私の知っているミュシャと全く違っていたから。

 

本当のミュシャに出会えた日 (アルフォンス・ミュシャ)

 

ミュシャは本当はこんな風に思っていたんだ・・・とても衝撃的でした。

歴史画を描きたいという気持ちは、画家をめざした時からだったなんて

絵の中には彼の思い、彼らのメッセージが込められています。

 

本当のミュシャに出会えた日 (アルフォンス・ミュシャ)

 

あなたは何を話そうとしてるの?

 

そして思わず語りだしそうな男性。薄くぼんやりと描かれた群衆も何かを言いたそう。

彼らと目が合うと心の叫び、魂の訴えを感じました。

 

本当のミュシャに出会えた日 (アルフォンス・ミュシャ)

 

一つの絵が舞台になっているのは、以前大ヒットした映画のポスターと

同じような気がして、思わず吸い込まれていきます。

祈りと平和を絵に託したミュシャ。

 

本当のミュシャに出会えた日 (アルフォンス・ミュシャ)

 

彼の思いや世界に残したメッセージに、今まで軽く好きだったミュシャのへ思いが

一変して、強くミュシャの絵に胸を打たれました

その夜、ベッドの中で何度もミュシャの絵が出てきてしまうくらい・・・

 

 

本当のミュシャに出会えた日 (アルフォンス・ミュシャ)

 

 

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