実家の父は、85歳。
2、3年前より体調を崩し、去年までは44キロだった身体も、今では33キロになってしまいました。
体調を崩す前までは、毎日、2~3キロを歩くのが習慣でしたが、今では自力で歩くのがやっと。
そんな父が、母にこう言ったそうです。
「もう一度、安心院のすっぽん鍋を食べたいもんじゃ。」
よし!わかった!
そんなに食べたい物があるのなら、食べに連れて行ってあげようじゃないの!
ここは、安心院の 「料亭 やまさ旅館」
すっぽん鍋で有名な旅館です。
故 松本清張氏も大分に出張の際には、必ずといっていい程ここを訪れて、このすっぽん鍋を
食していらっしゃったのだとか・・・。
こちらは、創業 大正9年。
個室は、最近リニューアルされて綺麗なのですが、お部屋から見えるお庭は、歴史を感じずにはいられません。
最初に出てきたのは、生血と、肝の酢あえと、エンペラの湯引き。
生血は、新鮮なオレンジジュースか、お酒で割っていただきます。
生血と聞いて、“ギョッ” とする方も多のでは?
実は、母もその一人で、おそるおそる杯に口をつけていました。
でも、全く生臭くなく、どろっとした感じも無く、むしろ、さらっとして飲みやすいんです。
オレンジの香りも爽やかです。
肝も、全く生臭くなくて、滋味。
エンペラは、まるでフグの皮の湯引きみたい!
仲居さんが、お部屋に入ってすぐにお茶を淹れて蒸してくださっていて、絶妙なタイミングでお茶を出してくださいました。
その、お茶の香りの深い事!
たかがお茶、されどお茶。
お茶の淹れ方一つで、お料理の味も、ぐーーんと上がるのですから。
そして、本日のメイン、すっぽん鍋の登場です。
こちらで使われているお鍋にしても、小鉢にしても、すべてすっぽんがデザインされています。
小粋な演出に、わくわくしてしまいます。
こちらで使われているすっぽんは、1ヵ月前から餌断ちをしているのだとか。
だから、泥臭い匂いも全くしません。
何より、この黄色い脂が、上質なすっぽんの証。
そして、すっぽん鍋のスープは、こうらを4時間以上煮こんで作る、こちらだけの秘伝の出汁。
すっぽん以外、何も使っていない出汁なのに、一緒に煮込むお野菜の味が加わって、本当に
上品で、味わい深いの。
すっぽんとお野菜を食べたら、この特性スープの中にごはんと卵を入れて、おじやに。
このスープ、見た目には黒いのですが、味は全く濃くないのです。
ごはんが、スープを吸って、美味でございますーーー!!
そして、シメは、すっぽんで作ったかぼすのシャーベット ミント添え。
全てが、完璧!!
食がみるみる細くなった父も、この日ばかりは、時間をかけて完食しました。
ゴルフが大好きだった父は、大分でゴルフをした後、ここでよくすっぽんを食べて帰っていたそうです。
そんな若かった頃の思い出とともに、滋味深いすっぽんを食べて、また元気になりたいという
父の願いが込められていたのでしょうね。
父の満足そうな顔。
そうそう、この顔がみたかったのよ!お父さん!
日々、老いてゆく身体をもてあます日もあるでしょう。
生きて行くことは、本当に大変ね・・・お父さん。
誰にでもやってくる、“老い”。
今、こうして父から “老い” を学ばせてもらっています。
料亭 やまさ旅館のホームページは こちら