父の思い出の味 ~安心院・やまさ旅館のすっぽん鍋~

実家の父は、85歳。

2、3年前より体調を崩し、去年までは44キロだった身体も、今では33キロになってしまいました。

体調を崩す前までは、毎日、2~3キロを歩くのが習慣でしたが、今では自力で歩くのがやっと。

 

そんな父が、母にこう言ったそうです。

「もう一度、安心院のすっぽん鍋を食べたいもんじゃ。」

 

よし!わかった!

そんなに食べたい物があるのなら、食べに連れて行ってあげようじゃないの!

 

 

すっぽん鍋 2017-10-1

 

 

 

ここは、安心院の 「料亭 やまさ旅館」

すっぽん鍋で有名な旅館です。

 

 

すっぽん鍋 2017-10-2

 

 

故 松本清張氏も大分に出張の際には、必ずといっていい程ここを訪れて、このすっぽん鍋を

食していらっしゃったのだとか・・・。

 

こちらは、創業 大正9年。

個室は、最近リニューアルされて綺麗なのですが、お部屋から見えるお庭は、歴史を感じずにはいられません。

 

 

すっぽん鍋 2017-10-3

 

 

最初に出てきたのは、生血と、肝の酢あえと、エンペラの湯引き。

 

生血は、新鮮なオレンジジュースか、お酒で割っていただきます。

 

生血と聞いて、“ギョッ” とする方も多のでは?

実は、母もその一人で、おそるおそる杯に口をつけていました。

でも、全く生臭くなく、どろっとした感じも無く、むしろ、さらっとして飲みやすいんです。

オレンジの香りも爽やかです。

 

 

すっぽん鍋 2017-10-4

 

 

肝も、全く生臭くなくて、滋味。

エンペラは、まるでフグの皮の湯引きみたい!

 

仲居さんが、お部屋に入ってすぐにお茶を淹れて蒸してくださっていて、絶妙なタイミングでお茶を出してくださいました。

その、お茶の香りの深い事!

 

たかがお茶、されどお茶。

お茶の淹れ方一つで、お料理の味も、ぐーーんと上がるのですから。

 

 

すっぽん鍋 2017-10-5

 

 

そして、本日のメイン、すっぽん鍋の登場です。

 

 

すっぽん鍋 2017-10-6

 

 

こちらで使われているお鍋にしても、小鉢にしても、すべてすっぽんがデザインされています。

小粋な演出に、わくわくしてしまいます。

 

 

すっぽん鍋 2017-10-7

 

 

こちらで使われているすっぽんは、1ヵ月前から餌断ちをしているのだとか。

だから、泥臭い匂いも全くしません。

何より、この黄色い脂が、上質なすっぽんの証。

 

 

すっぽん鍋 2017-10-12

 

 

そして、すっぽん鍋のスープは、こうらを4時間以上煮こんで作る、こちらだけの秘伝の出汁。

すっぽん以外、何も使っていない出汁なのに、一緒に煮込むお野菜の味が加わって、本当に

上品で、味わい深いの。

 

 

すっぽん鍋 2017-10-8

 

 

すっぽんとお野菜を食べたら、この特性スープの中にごはんと卵を入れて、おじやに。

 

このスープ、見た目には黒いのですが、味は全く濃くないのです。

ごはんが、スープを吸って、美味でございますーーー!!

 

 

すっぽん鍋 2017-10-9

 

 

そして、シメは、すっぽんで作ったかぼすのシャーベット ミント添え。

 

 

すっぽん鍋 2017-10-10

 

 

全てが、完璧!!

 

食がみるみる細くなった父も、この日ばかりは、時間をかけて完食しました。

 

 

すっぽん鍋 2017-10-11

 

 

ゴルフが大好きだった父は、大分でゴルフをした後、ここでよくすっぽんを食べて帰っていたそうです。

 

そんな若かった頃の思い出とともに、滋味深いすっぽんを食べて、また元気になりたいという

父の願いが込められていたのでしょうね。

 

父の満足そうな顔。

そうそう、この顔がみたかったのよ!お父さん!

 

日々、老いてゆく身体をもてあます日もあるでしょう。

生きて行くことは、本当に大変ね・・・お父さん。

誰にでもやってくる、“老い”。

今、こうして父から “老い” を学ばせてもらっています。

 

 

すっぽん鍋 2017-10-13

 

 

料亭 やまさ旅館のホームページは   こちら

 

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